膵臓の病気と治療

1.膵臓とは

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膵臓の役割には、内分泌機能と外分泌機能があります。
内分泌機能:インスリンやグルカゴンといったホルモンを血液中に分泌して血糖値の調節を行います。インスリンが不足すると糖尿病になります。
外分泌機能: 膵液と呼ばれる非常に活性度の高い消化酵素を十二指腸内に分泌します。膵液の分泌障害が起こると重篤な炎症(急性膵炎)を発症します。急性膵炎は、しばしば命に関わる重篤な状態まで悪化することがあります。

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当科ではさまざまな膵疾患の治療を行っています。代表的なものは膵がんです。その他、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵神経内分泌腫瘍(PNENまたはPNET)、粘液性嚢胞腫瘍 (MCN)、漿液性嚢胞腫瘍 (SCN)、充実性偽乳頭状腫瘍 (SPN)、転移性膵腫瘍などがあります。これらの治療は疾患、発生部位、進行度により治療法が異なります。

3.膵がんとその治療

ご存知のように、膵がんは非常に悪性度が高く、また見つかった時点で既に進行していることが多いため、他の臓器のがんと比較すると患者全体の治療成績は不良です。しかし、膵がんであっても早期に発見して適切な治療を受ければ、高い確率で治すことが可能です。また、ある程度進行した膵がんに対する治療も、抗がん剤治療の発展に伴って大きく改善してきました。一般的に、がんの治療成績をよくするためには、早期発見と治療法の進歩の2つが鍵になります。この2つに焦点をあてて、当科で先進的に取り組んでいる膵がん治療をご紹介します。

ステージ0膵がんの診断と低侵襲手術

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ところが最近、ステージ0の膵がんが見つかるようになってきました。ステージ0の膵がんは、非浸潤がん、上皮内がんと呼ばれ、手術で切除することでほぼ100%治すことができます。しかし、しっかりとした腫瘤になる前の段階ですので、エコー検査やCT検査でがんそのものを検出することはできません。ステージ0の膵がんができると、その周囲の膵臓が部分的に萎縮したり、膵管の小枝(分枝膵管と呼ばれます)が拡張して嚢胞(小さな袋)状になったりすることが分かってきました。こういったがん周囲に起きる微小な変化(間接的所見)をエコー検査やCT検査でとらえることでステージ0膵がんの存在を疑います。次に、内視鏡を使った膵液の細胞診検査を行います。ステージ0膵がんもしくはその前段階の病変があると、膵液中に流れ出てくる腫瘍細胞が検出されますので、内視鏡を使って膵液を採取します。

ただし、腫瘍は良性から悪性(がん)へと段階的に悪性度が上がっていきますが、細胞診検査だけではどの段階かの正確な診断ができない場合があります。腫瘍の悪性度を判断するためには剥がれ落ちてきた一つひとつの腫瘍細胞の形だけでなく、細胞の並び方や集まり方の情報が必要です。最終的な診断は、膵臓を切除して腫瘍そのものを顕微鏡で詳しく調べなければ得られないのが現状です。こうした腫瘍は、良性からいずれ非浸潤がん(上皮内がん)となり、その次は浸潤がん(浸潤性膵がん)になるのですが、問題はその時期がいつなのかという点です。何年も変化がない場合もありますが、いったん進み始めると一気に浸潤がんまで段階が進んでしまう場合もあり、すぐに手術をして膵臓を切除するかどうか悩ましいところです。

そこで当科では、症状も無く、いまだ致命的ではないステージ0膵がんの患者さんには、できるだけ負担が軽くリスクの低い手術を勧めたいという内科の専門医からの依頼にお応えして、低侵襲手術による膵切除術を一つの選択肢としてご提案しています。当科の本田五郎医師は、膵臓の低侵襲手術の実績が豊富であり、これまで多くのステージ0膵がんの患者さんの手術を行ってきました。特に腹腔鏡下膵体尾部切除術を受けた患者さんは、合併症が無ければ手術後1週間程度で退院し、1か月程度で食生活も含めて手術前とほぼ同じ生活に復帰できます。一般的な合併症(膵液瘻)発生率が平均30%といわれる中、本田五郎医師のチームは直近の約200人の患者さんにおいて3%以下の発生率で安全な手術を行っています。

膵がんの早期発見とそれに対する低侵襲手術による治療は、まだ始まったばかりです。この組み合わせによって膵がんで亡くなる患者さんは減少することが予想されますが、客観性のあるデータが出るまでには10年くらいかかる見込みです。

ステージI以上の膵がん(浸潤性膵がん)とその治療

浸潤性膵がんに対する治療は、抗がん剤治療の発展に伴って大きく変化してきました。有効な抗がん剤が複数開発され、治療に使われるようになったため、手術との組み合わせによって治る患者さんの数は増えています。完全に治らないとしても、抗がん剤治療を受けながら通常の生活をかなり長く継続できている患者さんの数も増えています。当科における現在の治療方針を、膵がん取扱い規約(我が国の膵がんデータを効率的に収集するためのデータ記録方法の約束事)の切除可能性分類に沿ってご説明します。切除可能性分類は、膵がんの進行度に応じて膵がん本体が安全に切除できるかどうかという観点での分類です。もちろん、安全な切除が可能かどうかは、膵がんの状態だけでなく外科医の技術にもよります。

切除可能膵がん

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当科では、ゲムシタビン塩酸塩(製品名;ゲムシタビン、ジェムザールなど)とエスワン(製品名;エスワン、ティーエスワン、TS-1など)の2剤併用療法(14日間治療後7日間休み)を4回繰り返す治療を術前化学療法として採用しています。持病などのために抗がん剤治療ができない患者さん以外の患者さんには、原則としてこの治療をお勧めしています。もちろん、患者さんご自身がすぐに手術を受けることを希望される場合には、手術を行います。

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術前化学療法中に、がんが大きくなったり他の臓器(肝臓や肺など)への転移が明らかになったりした場合には、別の種類の抗がん剤に変更して抗がん剤治療を継続することをお勧めしています。「先に手術をしていれば、こんなことにはならなかったのではないか」というご質問を受けることがありますが、膵がんは先に手術をしても手術後早期に再発する患者さんが少なくないという事実から顧みると、先に手術をしていたら、すぐに再発して、抗がん剤治療を受けるための体力が低下したり、抗がん剤治療の開始が遅れたりすることによって、むしろ生存期間を短くしてしまっていた可能性が高いと私たちは考えています。

無事に手術を終了して安定して食事がとれるようになったら、エスワンによる術後補助化学療法を約半年間行って、一連の治療が完了します。

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当科では、抗がん剤治療を少なくとも半年間継続して、膵がんの悪性度(進み具合)を観察します。使用する抗がん剤の第一選択は、ゲムシタビン塩酸塩(製品名;ゲムシタビン、ジェムザールなど)とナブパクリタキセル(製品名;アブラキサン)の2剤併用療法(21日間治療後7日間休み)です。治療中は、抗がん剤の効果や副作用を細かく観察しながら、抗がん剤の投与量や投与間隔を微調整したり、あるいは抗がん剤の種類を変更します

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切除不能膵がん

膵臓の背側に接して重要な動脈(腹腔動脈、上腸間膜動脈)や静脈(門脈、上腸間膜静脈)、他臓器への直接的な広がり(浸潤)が高度であったり、あるいは他臓器(肝臓や肺など)へ転移している状態です。ステージIIIの一部とIVが切除不能膵がんに含まれます。手術ですべてのがんを切除しきれないため、抗がん剤治療が治療の中心となります。ただし、抗がん剤治療が有効で、がんが縮小したり、転移が消失して、腫瘍マーカー(CA19-9、DUPAN-2など)が正常値もしくは正常値近くまで低下している状態が半年以上継続した場合、手術による切除を受けて頂くことを検討します。

4.膵がん以外の膵疾患に対する治療

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5.膵臓の手術

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膵体尾部切除術

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多くの場合、脾臓も切除します。脾臓に出入りする血管(脾動脈と脾静脈)は膵尾部に接して走行しており、膵臓とも繋がっています。膵尾部を切除する際にこれらの血管を残すことは技術的に可能ですが、血管の周囲に膵臓の一部やがん転移の起きやすいリンパ節を残してしまう危険性があります。また、手術手技が複雑になるため手術時間が超過したり出血量が増加したりすることがあります。脾臓がなくなることによって重症肺炎にかかりやすくなるという報告もありますので、肺炎球菌性肺炎予防のためのワクチン接種(5年に1回)をお勧めしています。

膵がんの場合、周囲の臓器、がんが浸潤している、もしくはその疑いがある臓器(例えば左副腎や大腸、胃の一部)を一緒に切除することもあります。

なお、当科ではほとんどの膵体尾部切除術を腹腔鏡下に行っています。全身麻酔下で臍もしくはその近くに約1cmの小孔を開け、小開腹します。そから炭酸ガスを送気し、お腹をドーム状に膨らませます。腹腔鏡を挿入し、内部を観察します。引き続き1cm大の穴を3~5ヶ所開け、そこから手術操作のための細長い器具(鉗子)を挿入し、外科医はモニターを見ながら手術を行います。脾動脈にクリップをかけて切離し、専用の機材(自動縫合器)を用いて膵臓を離断します。その後、膵体尾部と脾臓を周囲の臓器から剥離し、摘出します。手術後は翌日から飲水、歩行を開始し、2日目くらいから食事を開始します。順調に経過すると7~9日目に退院できます。先にも示しましたが、本田五郎医師のチームは、膵体尾部切除術後の一般的な合併症(膵液瘻)発生率が平均30%といわれる中、直近の約200人の患者さんにおいて1%以下の発生率で安全な手術を行っています。この成績は、当科で受けて頂く膵体尾部切除術が、どこよりも安全であることを示しています。

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